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富士通の「FMV LIFEBOOK SH」シリーズは、13.3型ワイド液晶ディスプレイを搭載したモバイルノートPC。状況に応じて、内蔵の光学ドライブを取り外して軽量化したり、別のデバイスを装着できるのが特徴だ。
【「FMV LIFEBOOK SH76/E」を試す】
2011年秋冬モデルではデザインを一新し、グッとスリムで軽量に生まれ変わり、13.3型ワイド液晶と光学ドライブを搭載したモバイルノートPCとしては、世界最薄(突起部を除く最厚部の寸法。2011年10月3日現在、富士通調べ)を実現しているのも見逃せない。
今回は上下2モデルの店頭販売向けラインアップのうち、CPUにCore i5-2520M、データストレージに128GバイトSSDを採用する上位機「FMV LIFEBOOK SH76/E」を入手できたので、性能、機能、バッテリー駆動時間、静音性などを検証していこう。
●Ultrabookより軽い? しっとりとした質感のスリムボディ
マットブラックのボディは、液晶ディスプレイ部の薄さを強調しつつ、シンプルにまとめたフォルムで、天面とパームレストにしっとりとした触感のラバー質の塗装が施されており、独特の質感がある。キートップの側面をブルーに着色したアイソレーションタイプのキーボードを採用するなど、デザインもこだわりが感じられる。
表:FMV LIFEBOOK SH上位モデルの新旧比較一覧
(http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1111/17/news078.html)
ただ、底部にはメンテナンス用の小カバーや排気口、強度を確保するためと思われる段差などがあり、ライセンスシールなども貼られている。このあたりまで見た目のよさを徹底しているわけではないが、個人的にはこういう機能的な外観に悪い印象はない。
右側面のDVDスーパーマルチドライブは着脱式のモバイル・マルチベイ構造になっており、光学ドライブを取り外して付属のベイカバーを装着することで、ボディを120グラム軽量化できる。そのほか、バッテリー駆動時間を約4.5時間(公称値)延ばすベイバッテリーや、プロジェクターユニットがオプションとして用意されており、用途に合わせて柔軟な運用が行える。
ボディサイズは316(幅)×223(奥行き)×16.6〜23.2(高さ)ミリ、重量は約1.34キロだ(実測での重量は約1.33キロとほぼ公称値通り)。着脱式の光学ドライブを搭載していながら、厚さを最厚部で23.2ミリに抑えており、ベイカバー装着時には約1.22キロと、光学ドライブを内蔵しないアップル「MacBook Air」やASUS「ZENBOOK」の13型モデルより軽くなるのは立派だ。
軽さと頑丈さを両立するため、マグネシウム合金を天面、底面、パームレストの3面に使用しており、薄型ながら堅牢な設計も健在だ。天面からの前面加圧試験(約200キロf)、天面からの一点加圧試験(約35キロf)、衝撃試験、電源オフ時の落下試験などを開発段階でクリアしているという。
実際の製品でこういった耐久試験の数値が保証されるわけではないとはいえ、具体的なテスト内容や数値が公開されている点は心強い。実際に持ってみても剛性感は十分だ。端のほうを押したりしても、不安になるようなたわみやきしみは感じない。
液晶ディスプレイのヒンジ部に内蔵するリチウムイオンバッテリーの容量は72ワットアワー(10.8ボルト 6700mAh)で、公称のバッテリー駆動時間は約13.7時間(ベイ用カバー装着時)と非常に長い。光学ドライブと交換できるオプションのベイバッテリーを装着した場合、公称の駆動時間は約18.2時間だ。
ACアダプタのサイズは49(幅)×107(奥行き)×30(高さ)ミリ、重量は電源ケーブル込みで292グラムと、13.3型モバイルノートPCでは大きくないサイズだ(いずれも実測値)。泊まりがけの出張などに持ち出す際も邪魔にならないだろう。
先代機との主な比較は下表にまとめたが、従来通り通常電圧版のCore i5を搭載していながら、重量で約320グラム(ベイカバー装着時は300グラム)軽くなっているほか、厚さも最薄部で約8ミリ、最厚部で約9ミリ薄くなっている。さらに、バッテリー容量も5ワットアワー増え、公称駆動時間は約3.3時間延びており、あらゆる面で大きな進化が感じられる。
●薄型軽量ボディに通常電圧版Core i5を詰め込む
CPUは通常電圧版のCore i5-2520M(2.5GHz/最大3.2GHz)を採用している。Sandy Bridgeの開発コード名で呼ばれる第2世代Core iシリーズの中堅モデルで、これは先代機と同じだ。
Ultrabookなど1キロ台前半のモバイルノートPCでは、放熱設計やバッテリー駆動時間の関係から低電圧版/超低電圧版のCPUが採用されることが多いが、低電圧版/超低電圧版のCPUは発熱が低いぶん、通常電圧版に比べて動作クロックが低く、パフォーマンスも低いデメリットがある。これだけの薄型軽量ボディながら通常電圧版CPUを搭載しているのは大きなアドバンテージといえる。
グラフィックス機能はCore i5-2520Mが内蔵するIntel HD Graphics 3000を利用する。第1世代Core iシリーズ内蔵のIntel HD Graphicsに比べて3D描画性能が向上しているほか、高機能なメディア処理機能「Intel Quick Sync Video」を搭載している。対応ソフトを利用することで、HD動画を快適に鑑賞できるだけでなく、ハードウェアエンコーダによる動画変換などの作業も高速に行なえる。
●店頭モデルにもSSDを採用してパフォーマンスアップ
メモリはPC3-10600 SO-DIMMに対応しており、標準で4Gバイト(2Gバイト×2枚)を搭載し、最大搭載容量は8Gバイト(4Gバイト×2枚)となっている。メモリスロットは背面の小さなカバーから容易にアクセスすることが可能だ。
データストレージに標準で128GバイトのSSDを搭載している点にも注目したい。フラッシュメモリにデータを記録するSSDは、HDDに比べてアクセス速度が非常に高速で、OSの起動やWebブラウズやアプリケーション起動など、レスポンスを高速化する効果がある。ヘッドやプラッタなどの機械部品がないため動作音がなく、衝撃や振動に強いというメリットもあり、モバイルノートPCとはたいへん相性がよい。
これまでも直販モデルのカスタマイズでSSDの搭載は可能だったが、量販店モデルに標準搭載されたことは歓迎したい。
ちなみに、評価機に搭載されていたSSDは東芝の「THNSFB128GMSJ」という小型モジュールタイプ(コネクタ自体は通常のSerial ATAコネクタが利用されている)のモデルだ。樹脂製のマウンタを介して底面からアクセスできる2.5インチベイに装着されている。
レスポンスについては「クイックスタート」という機能も搭載されている。これは、電源ボタンを押してWindows 7を終了した場合に、どのモードへ移行するかを設定できる機能だ。
クイックスタートの設定には、通常のシャットダウンのほか、PCスタート時間を短縮する「クイックモード」とPCスタート時間と省電力を両立する「エコクイックモード」が用意されている。電源ボタンを押してWindows 7を終了すると、一度リスタートした後にスリープ(クイックモード)/ハイバネーション(エコクイックモード)に入る仕組みのようで、実際には電源は切れていないが、ユーザーはそれを意識することがない。
起動時間を比較してみたところ、通常はWindows 7の起動に31秒前後かかったのに対し、クイックモードでは約10秒、エコクイックモードでは約25秒での起動が可能だった。
なお、クイックスタート設定時の消費電力についても計測を試みたが、手持ちのワットチェッカーではどのモードでも0.0ワットと表示されてしまい、測定限界以下の消費電力だった。
●薄型軽量モバイルノートPCでは充実の拡張性
本体装備の端子類は、USB 3.0、2基のUSB 2.0(1基は電源オフ時のUSB充電対応)、HDMI出力、アナログRGB出力、ExpressCard/34スロット、SDXC/SDHC対応SDメモリーカードスロットなど、このクラスの薄型軽量モバイルノートPCとしてはかなり充実しているといえる。特にExpressCard/34スロットを備えている製品は最近では珍しい。
通信機能は1000BASE-T準拠の有線LAN、IEEE802.11b/g/n準拠の無線LAN、そしてIEEE802.16e-2005準拠のモバイルWiMAXを標準搭載する。Bluetoothは内蔵していない。
そのほか、液晶フレームの上部に約30万画素のWebカメラ、タッチパッドの左右ボタンの間に指紋センサーを装備している。
プリインストールOSは、64ビット版のWindows 7 Home Premium(SP1)を採用している。オフィススイートにはPowerPointとOneNoteが含まれたOffice Home and Business 2010を搭載するほか、豊富な電子辞書アプリ、さまざまな用途向けのアプリ、独自のサポート系ユーティリティなど、富士通のオールインワンモバイルらしく付属ソフトは盛りだくさんだ。
●明るく視認性の高い13.3型ワイド液晶ディスプレイ
白色LEDバックライトを採用した液晶ディスプレイのサイズは13.3型ワイド、画面の表示解像度は1366×768ドットに対応する。第1回消費者金融&比較の始まり富士通独自の液晶ディスプレイの位置付けは「薄型・軽量・高輝度タイプのスーパーファイン液晶」とされている。
表面は光沢仕上げで、明るく鮮やかな表示だ。特に色味のクセも感じられない。光沢パネルだけに映り込みはあるが、モバイルノートPCとしてはよい表示品質といえる。
一般的なノートPC用のTNパネルだけに視野角は広くないが、液晶ディスプレイのチルト角度は約155度まで開くので、上からのぞき込むような体勢で使う場合でも見やすい角度に調整可能だ。
●独自の工夫を凝らしたアイソレーションキーボード
キーボードはアイソレーションタイプで、キーボードユニットとキーボードベゼル/パームレストをシームレスに一体化させたデザインとなっている。キートップの側面はブルーに着色した「サイドカラーキーボード」となっており、見た目に新鮮に映る。
配列は標準的な6段配列で、特に目立つクセはない。キーピッチはほとんどのキーで約19×19ミリを確保するほか、EnterキーやBackSpaceキーが大きく、カーソルキーが半段下げた位置に置かれるなど、ボディを広く使ったゆったりとした配置となっていて、打ちやすい。
また、各キーを液晶ディスプレイ側から手前側に向かってわずかに傾斜させ、階段状の段差を付けてミスタイプを抑制しつつ、キートップはわずかに凹形状にすることで、指がなじむように工夫した「ナチュラルフィット」タイプとなっている。
凹形状といってもレノボの「ThinkPad」などに比べるとかなり控えめな形状で、見た目にはほとんど分からない。このようなキートップの製品は珍しくないが、完全にフラットなキートップよりは指が置きやすい。キーストロークは約1.7ミリと浅いが、タッチ感は良好だ。ユニットの固定もしっかりしている。
キーボードの右奥には「ECO」ボタンがあり、これを押すことで省電力モードへ移行する。省電力モードの設定は「省電力ユーティリティ」で行う仕組みだ。光学ドライブ、オーディオ、無線LAN、有線LAN、ディスプレイ、CPUパフォーマンスなど、デバイスごとの設定をカスタマイズできる。
●タッチパッドに加えてスクロールパッドも搭載
キーボード手前には、2ボタン式のタッチパッドを装備する。アルプス電気のドライバが導入されており、ユーティリティで設定することで2本指の開閉によるズームや回転、ページ送りなどのジェスチャー機能が利用できる(標準では有効になっていない)。
タッチパッドの2つのボタンの間には指紋センサーも配置している。WindowsやWebページへのログオン認証を指紋センサーへのタッチで代行できるほか、指紋センサーをなぞることでスクロール操作が可能だ。
また、タッチパッドの脇に円形のスクロールパッドを装備しており、円を描くようになぞることでスクロール操作が行なえる。カーソル移動とスクロールのために2つのパッドを移動する必要があるため、最初は戸惑うかもしれないが、慣れてしまえばWebブラウズ用途には便利だ。
●ベンチマークテストで新生SHのパフォーマンスを確認
それでは、各種ベンチマークテストの結果を見ていこう。FMV LIFEBOOK SH76/Eのスペックを改めて紹介すると、Core i5-2520M(2.5GHz/最大3.2GHz)、4Gバイトメモリ、128GバイトSSD、Intel HD Graphics 3000、64ビット版Windows 7 Home Premium(SP1)という内容だ。
Windowsエクスペリエンスインデックスのスコアは、下に掲載した画面の通りだ。CPU内蔵グラフィックスのIntel HD Graphics 3000を利用しているため、グラフィックスのスコアは「5.8」止まりだが、プロセッサのスコアは「7.1」、プライマリハードディスクは「6.7」と優秀で、3Dゲーム用途以外であれば快適に使えるだろう。
SSDの性能については、CrystalDiskMark 3.0.1で測定した。リード性能はよいが、シーケンシャルライトやランダムライトは最近のSSDとしては少し物足りないスコアだ。それでもリード全般や4K WriteのスコアなどはHDDよりもずっと高速なので、レスポンスのよさは感じられる。
PCMark 7をはじめとするパフォーマンステストの結果には、標準的なノートPCの目安として、「VAIO E」(VPCEH19FJ/W)のスコアも併記した。また、PCMark Vantageでは同シリーズの春モデル「FMV LIFEBOOK SH76/C」のスコアも記載している。データストレージが2.5インチHDD(5400rpm)である以外、CPU、メモリなど、性能に影響するスペックは共通だ。
PCMark 7、PCMark Vantageでは、SSDの搭載による高いストレージ性能が全体のスコアにも表れている。VAIO E(VPCEH19FJ/W)と比べると、ストレージ性能をみるSystem Storage Scoreで約2.6倍、総合スコアで約1.6倍と大きく上回るスコアをマークした。PCMark Vantageでは、FMV LIFEBOOK SH76/C(2.5インチHDD搭載)のスコアに比べて約1.6倍スコアが上がっている。
一方、3D描画系テストは振るわない結果となった。3DMark Vantageは途中や終盤でエラーが出てしまい計測できなかったが、MHFベンチマーク【絆】やストリートファイターIVベンチマークでは、VAIO E(VPCEH19FJ/W)と比べても、ワンランク見劣るスコアしか出なかった。
●バッテリー駆動時間も前モデルから強化
バッテリー駆動時間もBBench 1.01(海人氏作)を利用してテストした。無線LANでインターネットに常時接続し、「60秒間隔でのWeb巡回(10サイト)」「10秒間隔でのキーストローク」の設定で測定している。
電源プランは標準の「バランス(ディスプレイ輝度40%)」を利用した。ただし、標準ではバッテリー駆動時の「最大プロセッサの状態」が一般的な「100%」から「50%」へと下げられていたため、そのままの状態と100%へと引き上げた状態の2通りで計測している。いずれも光学ドライブは装着してテストした。
テスト結果は、最大プロセッサの状態が50%で6時間24分(残り10%表示で休止状態へ移行)、同100%では5時間45分(残り10%)と40分ほどの差が見られた。公称値の約13.7時間からすればかなり物足りないが、これはベイカバー装着時の値なので、光学ドライブ装着時ではより時間が短くなる。常時接続環境で6時間実働するならば、実用性は高いだろう。なお、以前にテストした春モデルに比べると、どちらの状態でも約1時間駆動時間が延びている。
●動作時の騒音や発熱はどうなっているのか?
静音性も優秀な部類に入る。システムに負荷をかけると左側面奥のファンは回るが、非常に抑えの聞いた音で、耳を近づけないとよく分からないほどだ。4スレッド同時実行するような高負荷作業を連続させた場合には大きな音がしたが、それ以外の時は、3D描画系ベンチマークの実行時も含めて意外なほど静粛だ。
それでいてボディの放熱もしっかりされており、システムに負荷をしばらくかけた状態でも、パームレストなど手が直接触れる部分が不快な熱をもつようなこともなかった。薄型軽量ボディに通常電圧版Core i5を内蔵していることを考慮すると、静音性と放熱性は良好といえる。
●確かなイノベーションを感じられる伝統的モバイルノートPCの進化形
2011年11月17日現在、FMV LIFEBOOK SH76/Eの実売価格は16万円前後だ。最近のノートPCは低価格化が進行していることを考えると高価に感じるかもしれないが、それだけの価値は十分にあり、納得できる仕上がりだ。
ボディが大幅に薄型化・軽量化されたにもかかわらず、性能はアップし、バッテリー駆動時間は延び、静音性や発熱も問題ないレベルにおさまっている。
これはまさしく技術革新のたまものだろう。従来からバランス型のコンセプトを掲げたモバイルノートPCとしてはよい製品だったが、薄型軽量ボディに進化したことで魅力は格段に増した。ターゲットとして想定しているビジネスユーザーはもちろん、より幅広い層に訴求力のある製品に仕上がっている。
最近はIntelが主導する薄型軽量ノートPCの新カテゴリー「Ultrabook」が話題だが、日本ではそのようなコンセプトが提唱されるはるか以前から、(Intelではなく)PCメーカー主導のモバイルノートPC文化が発展しており、魅力的なモバイルノートPCが多数開発されてきた。
FMV LIFEBOOK SH76/Eはその延長線上にある製品で、派手なインパクトはないものの、性能、バッテリー駆動時間、液晶ディスプレイやキーボードなどの使い勝手、あらゆる面で技術革新を感じられる製品となっている。見た目のインパクト、薄さ以外の要素でいえば、Ultrabookよりも格上の存在だ。もちろん、コンセプトも価格も異なるので単純な優劣はつけられないが、完成度の高いモバイルノートPCが欲しいならば、選択肢に加えておきたい。
なお、同社直販サイト「WEB MART」で購入できるカスタマイズモデルでは、8Gバイトのメモリや256GバイトのSSD、Blu-ray Discドライブ、あるいはノングレア仕上げの液晶ディスプレイなども選択できるので、そちらもあわせて検討するとよいだろう。■FX/比較TOP
[鈴木雅暢(撮影:矢野渉),ITmedia]
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